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医療におけるデジタルトランスフォーメーションが
今回の診療報酬改定の目玉のひとつになっています。
要するに国として国民の医療に関する情報を管理して行こうということなのですが、
これが言うほど簡単でないことは
すでにマイナンバーカードの保険証利用で明らかになっています。
市民も実感していますし、
我々医療従事者も大変な苦労を強いられています。
どんな分野であっても顧客情報を管理することは
売り上げに直結する重要な要素であり、
今や情報を制しなければ、他社との競争には勝てません。
医療分野では病院どうしの競走ではなく、
国としての問題になります。
例えば今回のコロナ禍におけるワクチン接種も
国民ひとりひとりに符番された情報管理がなかったが故に
接種方法、接種後との状況管理に遅れを生じ、
米国、韓国などとの差が歴然となりました。
特に先進国の中で日本は突出して人口減少が進んでいます。
出生数もさることながら、今生きている国民の健康管理が大変重要です。
特に労働生産性の高い年代は重点領域と言えます。
マイナンバーによってやっと日本も国民に唯一無二の符番がなされました。
収入の管理から健康保険証、そして運転免許証へと利用範囲が拡大して、
個人情報が集約されつつあります。
労働者の健康管理という点では、
運転免許更新時に健康診断の義務付けが以前から提案されています。
会社勤務であれば当然に毎年の健診は労働基準監督署の監査対象です。
しかし国民健康保険対象である自営業の方々には
毎年の健診受診率が高くありません。
でも運転免許を更新しない人はいないはずですから、
この機を逃してなりません。
他方、すでに医療機関に定期的に受診している人の情報管理も重要です。
有病率、生命予後などの予測にも使うことが可能です。
医療機関においては診療報酬という事業継続の要となる部分をすでに国が管理しています。
そこに紐付ける形でデータ提出を強制することは容易いことです。
それが今回の医療DXです。
当院は今回の診療報酬改定においてそのデータ提出を積極的に行う届け出をしましたが、
最初の話のように、「言うは易く行うは難し」で四苦八苦しています。
看護スタッフが改訂に合わせて現場の運用を工夫しながら行っています。
医師である私自身の負担は相当なものでありながら、
6月以降は減収にしかならないのです。
保険請求を担う事務スタッフの”手間”は膨大になりました。
今日も相談を受けましたが、
逆の立場なら心が折れそうな、気が遠くなるような作業が待ち構えていました。
ここまで現場にやらせて減収とは、
国が管理する保険制度の恐さが実感されます。
少なくとも今回の改訂を考えると
新たなクリニックの開業は非常に困難を伴います。
事業を開始する際のビジネスモデルの検討には
これまで以上に慎重さが要求されますし、
患者数に頼るモデルでは破綻は自明です。
医療を継続させるためには
早々に混合診療を解禁すべきです。
実は日本医師会が反対の立場ですが、
今回の改訂を精査すれば、方向転換せざるを得ないはずです。
一番注目すべき変化は
診療報酬改定に医師側の意見を反映することが出来なくなった点です。
表向き交渉の場はあるのですが、
会議の前に財務省から予算枠が決められたことです。
そしてそれは財政破綻を考えた”減額改訂”が前提です。
徐々に病院は病床数を減らしています。
患者数の減少もさることながら、
今の診療報酬改定の流れの中では経営を維持することが難しいからです。
特に個人病院は公的医療機関のような赤字補填の仕組みがありません。
今回の医療DXの主旨は妥当でありますが、
それを推進するためには少なくとも初再診料だけでも
各医療機関で自由に設定させるべきです。
場合によっては種々の管理料も厚労省が基準のみ提示して
実際の加算額は自由にすべきです。
いつまでも医療全てを保険診療で賄うことは困難だと考えます。
我々医療従事者は小売店や飲食店と同じように日々患者さん(顧客)のために
様々な工夫や配慮を行って
事業を継続してようと努力しています。
それ全てを国が一律に管理することは
最終的には仕事に対するモチベーションにも影響すると思います。
院長 小西宏明
2024-09-14 20:21:00
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スタッフが使っていて便利そうなので購入しました。
ミューズの石鹸です。
黒い部分に手をかざすと泡石鹸が自動で出てきます。
完全にはまってしまいました。
非常に便利です。
明らかに石鹸で手を洗う回数が増えました。
何故か。
従来のプッシュ式のものよりも便利だから。
でも私の気持ちに刺さったのは
心地良い機械音とそれに連動して出てくる泡です。
「ウイーン」っていう音で聴覚に訴えられ、視覚で泡が見えて、
薬液にはほんのり香り付けされ嗅覚を刺激され、
最後は触覚で手のひらの細かな泡を捉えられます。
いわゆる「五感に訴える」仕様なのです。
コロナ禍でアルコール消毒が普及して
この類いの製品は雨後の筍のように発売されています。
しかし何だかこのミューズには愛着が湧いてしまいました。
もしかしたら洗練しすぎていないデザインが
逆に良かったのかもしれません。
まあ好き嫌いは人それぞれです。
週末に石鹸を買わなくては。
院長 小西宏明
2024-09-13 19:12:00
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このようなタイトルの本やYouTube動画での解説は山ほどあります。
そして我々くらいの年齢になり、大きな組織運営に携わってくると
人物評価は自ずと身に付いてきますし、
そうでなければ組織を動かしていくことが出来ません。
おそらく我々自身も先輩方から同様の評価を受けて
今があるのだと思います。
少なくとも現場においては「仕事を覚える」ことが最優先です。
例えそこに課題があろうとも、
まずはこれまで継続されてきた手順を習得しなければなりません。
その上で、改善点を見出すとか、課題を抽出するとか、新しい提案をするとか、
次のステップがあるはずです。
しかし中には仕事が雑になってきたり、意図的に如何に手を抜くかという
”改悪”に向かおうとする者もいます。
今日は例によって青森の病院で手術を行いました。
久しぶりに一緒にメンバーに入った人がいました
もしかしたら今年初めてかもしれませんが、
介助は120点でした。
最も感心したのは術中に私が脱ぐオペ室用のサンダルを
最後に揃えて置いてくれたことです。
術中に足で操作する機械があり、誤作動させないためにサンダルを脱いでいます。
最低限自分の足運びの邪魔にならない位置に脱ぎ捨てるわけですが、
個人的には脱ぎ散らかすのが嫌いなため、
敢えて揃えています。
まあ手術そのものには一切関係ありませんが、
何事も整理整頓が手術室内での基本と考えています。
その看護師は手術終了時に私がサンダルを履きやすいように置き直してくれていました。
医師が履くサンダルがどうなっているかなど
手順の説明にはありませんし、
私自身も手術内容に影響しない自分のことなので何も言ったことはありません。
要はその看護師は術中の私の一挙手一投足を細かに観察して
最後にサンダルを履くときに履きやすい向きに直していたのです。
もうそれだけで今日の手術を気持ち良く終えることが出来ました。
もちろん手術自体はいつも通りに終了していますが、
終了後の満足度は”爆上がり”でした。
これまで多くの手術室看護師を見てきましたが、
ここまで仕事が出来る人は数名です。
ところで物事には”上”があれば”下”もあります。
私が脱いだサンダルを患者さんが病室に帰る時に使用するサンダルと勘違いして
全く逆向に揃え置いた看護師もいました。
私は一旦しゃがみ込んでサンダルの向きを変えてから履かなければなりませんでした。
患者さんの治療には関係ないことですし、
看護師の介助することでもありませんが、
非常に残念な気持ちになったのを覚えています。
試験勉強やスポーツの練習と同じです。
100%を目指しても本番では80%しか発揮出来ません。
常に120%を考えなければ満点は出ません。
仕事が出来る人とは、そういう努力が出来る人だと思います。
院長 小西宏明
2024-09-12 20:00:00
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アメリカ大統領選挙のテレビ討論会が行われました。
大方の評価はハリス氏優位とのことですが、
面白いと感じたのは、
討論会で皆が見ているのは内容よりも”姿”だという点です。
もう少し言うと、大統領に相応しい立ち居振る舞いかどうか。
故に服装も大事だし、発言の仕方や逆に相手の意見の聞き方も評価対象だそうです。
私はアメリカはもっと実務的なことを評価軸としているのではないかと考えていました。
具体的に大統領になったら何をどうするのかです。
それに対して日本の”今”はどうでしょうか。
折しも自民党と立憲民主党が党首選挙に入ります。
同じ党内での選挙であり国民の直接選挙ではないという違いはありますが、
世論の反応は全く他人事のような感じを受けます。
根本的には誰がなっても同じ、または旧態依然としたままだろうという諦めよりも
政治そのものへの無関心があると思います。
一方で候補者側の主義主張については
自民立憲民主を問わず、総じて具体的な施策は述べられません。
魅力的な言葉で飾られてはいますが、
実際には「関係各所の意見を十分に聞く」という、
当然の姿勢の念押しに過ぎません。
自分ならどうするという話を敢えて避けるのは、
事務方との検討で変更を余儀なくされることが想定内で
その際に「有言不実行」と言われたくないためでしょう。
ワイドショーの政治コメンテーターが、
「言うことがコロコロ変わる」という批判に対して、
「情勢に柔軟に対応する」と論評されました。
それでは己の主張が何か定まらないなあと思いました。
しかしそれでも現場が何とか動くのは
官僚政治に支えられているからです。
組織の長に権限が集中し過ぎる方が問題が大きい事例は多々ありますが、
誰がやっても同じというのも如何なものかと。
いずれにしてもこれから数ヶ月は
特にこの日米の選挙については
とても興味深く見ていけると考えています。
院長 小西宏明
2024-09-11 18:42:28
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楚の項羽は四面を漢の劉邦の軍に取り囲まれ、
その漢の軍が楚の歌をうたうのを聞いて
民がすでに漢に降伏したと思い絶望した。
このような故事による言葉です。
今の時期、これで思い浮かべるのはただひとつ、
兵庫県の斎藤知事だと思います。
と言うか、時々刻々アップデートされる情報からこの言葉が連想されました。
NHK、民放、ワイドショー、ネットニュースなどあらゆる媒体が
毎日のようにこの問題を取り上げています。
昨日は後援会組織の代表世話人である神戸商工会議所副会頭でアシックスのシニアアドバイザーの
尾山基氏が辞任されていたそうです。
議会、経済界、さらには一般県民からも見限られています。
何故ゆえに知事の職に固執されるのでしょうか。
ワイドショーでは幼少期からの生い立ちまで細かに紐解かれ、
原因?分析までされる有様です。
一方、秋篠宮紀子さまが58歳の誕生日のお言葉の中で、
ネット上の批判について心穏やかに過ごすことが難しいと述べられています。
斎藤知事にもネットでの不特定多数から意見も相当数あるはずで
内容を想像するに、
氏のメンタルの強さには驚かざるを得ません。
ただ実際には県民を含めた周囲の人々からの協力が得られない状況では
県政を先陣切って進めることは不可能だと思います。
街頭インタビューでは
「政治生命は絶たれた」という方もおられました。
折しも塩谷前文部科学大臣が次の衆院選には立候補せず、
政界引退を発表されました。
政治資金パーティーをめぐって自民党を離党した上での決断です。
塩谷氏は74歳、
方や斎藤知事は46歳。
政治の世界では74歳でも決して重鎮とまではならない中、
46歳とはいかに。
一方で総裁選候補の小泉氏は43歳です。
バラク・オバマ氏が大統領に就任したのは47歳。
40歳代には様々な可能性があると思います。
四面楚歌に続いて思い浮かんだのは
「唯我独尊」でした。
院長 小西宏明
2024-09-10 20:08:00
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「げんをかつぐ」
以前に良い結果が出た行為を繰り返し行うことで成功を願う。
良いことだけではなく悪いことにも使う。
これは我々日常でも見聞きしたり、自らも行ったことがあるはずです。
それが個々人のレベルを超えると
風水のように普遍性をもってくるのだと思います。
クリニックでは診断、検査、治療のために総合病院へ紹介することがあります。
函館市内では市立病院、中央病院、五稜郭病院のどれかになり、
専門医のいる、またはその病態の対処に長けている医師のいる病院を
まず最初に提案させて頂きます。
ほとんどの患者さんはそのまま紹介先が決まりますが、
中には験を担いで特定の病院を希望されたり、
逆に避けられたりします。
似たようなことは病院の退院日の選択でもあります。
「日が悪い」として退院を拒否されます。
験を担ぐことの是非は個別の問題であり、
特に医療分野においてはケースバイケースの対応が必要だと思います。
ところで似たような言葉に「縁起を担ぐ」があります。
調べてみると、縁起の逆さ言葉の「ぎえん」が徐々に鈍って「げん」になったというのが
有力な説だそうです。
縁起と験・・・そういうことだったのかと。
スポーツ選手など勝負を生業とする人達は
様々な験担ぎをもっておられます。
そしてそれが勝負に挑む時のルチーンの準備になったりしています。
例えば大谷翔平はバッターボックスに入る前の手順があります。
ただし単に験を担いでいるのではなく、
脚を置く位置の確認になっているようです。
私も似たことをやっています。
それが手術の際の手袋の着用方法です。
詳細に言葉で説明するのは難しく、
簡単に言えば手袋をはめた”手”が美しく見えるようにしています。
手袋は最低限指先の細かい作業がやりやすいように
着用出来ていれば必要十分ですが、
手術が上手い先生の指の動きは綺麗です。
少なくとも指先に手袋が余っていたりはしていません。
確か手塚治虫だったと思いますが、
フリーハンドで真円が描けなくなったら漫画家を引退すると言われたそうです。
外科医も指の動きが悪くなったら潮時かと思います。
いつもながら話が脱線しましたが、
物事がスムーズに進むような験担ぎは必要です。
院長 小西宏明
2024-09-09 21:34:00
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毎年恒例の函館グルメサーカスに行ってきました。
おそらく例年以上の人出であったと思います。
天気はと言うと、昨年一昨年同様の強い日差しのある晴れでした。
しかしさすがに北海道、木陰だと暑さを凌げます。
毎年来ていると、正直なところ肉もの、揚げ物、汁物、そしてアルコールと
目新しさを求めるよりも定番のものを食べると言った感じでした。
しかし今回一番びっくりしたのは毛虫です。
すでに報道されていますが函館ではアメリカシロヒトリの毛虫が大量発生しています。
市役所の周辺の木は軒並みやられていました。
道路が真っ白に見えるところがあるくらいの大量さです。
会場のテーブル席も木の下にあると
風で毛虫が落ちてくる有様です。
幸い刺されて毒があるわけではないようですが、
見た目や動き方は多くの方にとって気持ちの良いものではありません。
とてもじっくり観察する気にはならないでしょう。
調べてみると、
毛虫にも前と後ろがあり、
あのクネクネした長い部分が、頭部、胸部、腹部、尾部になっています。
胸、腹、尾にそれぞれ脚があり、主に腹脚で動いているようです。
腹脚が5対以上、すなわち10本以上脚があるとそれはハチの幼虫だそうです。
これは意外でした。
これだけ大量発生しているとその次は蛾の発生だと考えますが、
もしかしたら来月辺り蛾の大群が押し寄せてくるのでしょうか。
毛虫は木の周辺に行かなければ良いのですが、
蛾は飛びます。
昔、実家のある広島でチャドクガが大量発生し、
家々の外壁にビッシリ止まっているのを見たことがあります。
帰りに市役所で開放されているトイレに行ったのですが、
コンクリートの塊で木々からも離れているはずの正面玄関にも
大量の毛虫がいました。
気をつけて除けながら歩かなければならないほど。
これから何が起こるのでしょうか。
日本蛾類学会というのもあるようで、
誰か教えて欲しいと思います。
院長 小西宏明
2024-09-08 19:03:00
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下肢静脈瘤の治療を本格的に開始して10年余りになります。
今の治療の基本はカテーテルを使用した血管内焼灼術ですが、
いくつかの課題があります。
そのひとつが痛みです。
局所麻酔のみで行うため意識があることで、
どうしても痛みに対する不安が先行します。
実際に多く方は最初の局所麻酔の注射が痛かったと言われます。
次に多いのはTLAという、広い範囲を長く麻酔する液を注入する時の痛みです。
静脈瘤の周囲組織を薬液で広げていく何とも言えない違和感です。
逆に静脈瘤を潰す”焼灼”そのものの痛みの訴えは少なく、
また途中で痛みを感じた際はTLAを追加することが出来ます。
3つめは膝下の静脈瘤の処理、スタブアバルジョンの痛みです。
これは皮膚の奥を引っぱられる感じです。
静脈瘤の一部を皮下から引き抜いているからです。
局所麻酔では、触られている感じや引っ張られる感じを全く消すことは出来ません。
今回新しい治療方法を取り入れることにしました。
仮にTSVT(two-step venous treatment)と呼びます。
これは従来からある血管内焼灼術と硬化療法を組み合わせた方法です。
患者さんの痛みを最小限にすることが目的です。
第一段階は従来からの血管内焼灼術、
第二段階は膝下の静脈瘤への硬化療法です。
因みに硬化療法とは静脈瘤の中に硬化剤を注射して潰してしまう方法のことです。
使用する注射針は採血検査よりも細いものです。
下肢静脈瘤の主たる病因は、鼠径部にある静脈弁が破綻したことによる静脈逆流です。
逆流は下肢の遠位に大きな圧力の上昇を来すことで血管が瘤化しています。
血管内焼灼術はその主たる部分である大腿部の血管を潰します。
そして次の段階は敢えて一定期間を空けてから膝下の瘤に硬化療法を施します。
TSVTのメリットは大きく3つあります。
ひとつは局所麻酔の回数を少なく出来ること。
2つめは静脈瘤を引っぱる違和感、痛みがないこと。
3つめは敢えて時期を空けて2段階とすることで、
膝下の最も瘤が目立つ部分を重点的に治療できること。
医学は年々進歩しており、最先端の治療はいずれ一般的治療となります。
そしてその過程で様々な手技の工夫、修正がなされて
患者さんに最も有意義な治療へとブラッシュアップされます。
我々も10年以上の経験に基づいて
今回のTSVTへとブラッシュアップすることにしました。
今秋から導入していきます。
最先端治療は大学病院が中心となるべきですが、
一般化された治療の改良は実地医家の役割です。
挑戦を続けたいと思います。
院長 小西宏明
2024-09-07 21:59:00
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北海道もやっと先月末からコロナ感染患者が減り始めました。
9月1日現在で前週の84%余りです。
当院かかりつけ患者さんでは発熱者の約半分はコロナ陽性ですし、
ただ身体がだるいだけで検査して陽性となった場合もありますが、
明らかに以前よりも症状は軽症化しています。
これは市内の病院の状況でも同様で、
入院を要する人、集中治療管理となる人は聞きません。
一方で数字が出てきていないのが後遺症の発症数や発症率です。
ひとえに明確な診断基準がないことや
対応する医療機関が少ないからだと思います。
先週、親御さんからご相談のあった症例は
経過を伺う限りコロナ後遺症の可能性が濃厚でした。
未だ学生ですが、トイレにやっと歩いていけるだけで長期病欠中でした。
当院はもちろん成人を対象としたクリニックですが、
このままでは医療の手が及ばずに自宅療養が続く可能性が高いと判断されました。
せめて医療機関と結び付けることが出来るのならと
小児科対象年齢ではありましたが、受診して頂きました。
今週1週間を掛けて、いろいろな医療機関に受診の要請をしました。
札幌はもちろんですが、私の前職の大学病院付属のこども医療センターにも問い合わせました。
今回も「Know Who」、誰を知っているかが人生においては重要であると実感しました。
そして今日、やっと受け入れてくれる医療機関、小児科が見つかりました。
しかも当院スタッフも面識のある先生であったため安心してお任せ出来ます。
夕方お父様に連絡すると、電話口ではありますが、
お喜びの様子がひしひしと伝わりました。
医師としてよりも単純に人として”人助け”が出来たと思いました。
医学的には難しい病態であり、
これから診断を進めて治療が開始されるはずです。
小児特有の難しさもあると思います。
当院受診にはお母様も来られ、ここまでのご苦労のせいか涙ぐんでおられました。
しかしこの御両親の下であれば、
患者さんも病気を克服していけると確信します。
今回はコロナ感染症が原因と決まったわけではないものの、
全国の後遺症と診断されて治療を続けておられる患者さんを思うと、
「風邪のウイルスのくせにとんでもない変異をしたな」と
言わざるを得ません。
一旦、私の役目は終わりましたが、
今、地方では医師不足が着実に進んでおり、
特に特殊な病気に対応出来る専門医がいかに不足しているか、
改めて身に染みました。
若い先生方は2年間の研修医としてのトレーニングが義務付けられており、
広く浅い知識と経験を積むことで、「木を見て森を見ず」とならない医師を育てる意義があります。
しかしその期間を終えたあとは、やはり専門医として少なくとも10年以上の研鑽を積まれることを期待します。
そして医学を前に進めていくためにはそういった専門の知識と経験が必要です。
じっくり木の隅々まで観察出来て尚且つ森全体のことも考える。
今回の患者さんのことから勉強させて頂きました。
院長 小西宏明
2024-09-06 21:52:00
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今日は毎月行っている保険診療のワーキングでした。
今回は血液内科の診療状況について
保険診療という点から検討してみました。
そもそも日本の医療制度は保険診療というものがベースになっており、
それは必ずしも現場の実態に即していません。
今年の診療報酬改定では昨年までと同じ診療を行っていても
減収になる改悪?でした。
案の定、大学病院クラスの大病院は軒並み赤字転落しています。
では現場のニーズ、毎月の保険請求に対して
満額を保険で賄おうとすると、
おそらく1年待たずに財政破綻するはずです。
原資はもちろん税金です。
この種の検討会ではいつも
「医療と保険診療は別物」
「保険制度はゲームのルールのようなもの」と説明しています。
ルールを逸脱すると罰金や退場が課せられるわけではなく、
単に請求の一部が支払われないだけです。
しかし逸脱を繰り返して現場の医療がどんどん進められると、
逆に病院が破産してしまいます。
国の保険財政が破綻するか
病院がつぶれるか、二者択一と言えます。
今回の診療報酬改定を主導したのは
どうやら財務省のようです。
実は血液内科は非常に高額な医薬品を使用する診療科です。
心臓外科で人工弁や人工血管など数百万単位の医療材料を多用するのと同じです。
今日の検討の中で最も問題として感じたのは病床数の少なさです。
治療が必要な患者さんが十分入院出来ない事態が起きています。
さらに重症患者に必要な無菌室という特殊な病床も不足しています。
道南地区には血液内科は2病院しかなく、
しかも実際には市立病院がほとんどの診療を賄っています。
医師数も欠員状態のままです。
要するに医師も足りない、ベッドも足りない、
そのために本来得られるべき収入も取りこぼしていると言えます。
保険診療の理解を進めていくというワーキングの主旨からすると
先生方の理解は既に一定レベルを超えており、
むしろ病院としての体制の課題が浮き彫りになりました。
科長の先生からは歴代の病院長との交渉の経緯も吐露されました。
私のような第三者の目から見て、
少なくとも病床数の調整は喫緊の課題だと思いました。
今日は思わぬ展開になりましたが、
広義には道南の医療体制の問題です。
患者のニーズにあった医療提供体制になっていません。
根っこにあるのは医師不足です。
改めて医師の地域偏在、診療科偏在を
制度として変えていかなければなりません。
院長 小西宏明
2024-09-05 21:43:00
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