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染め物

染め物

NHKの番組「あの人に会いたい」で染色家の吉岡幸雄氏を取り上げていました。
日本伝統の植物染めの再現に取り組んでこられた人です。
参考文献から膨大な実験を繰り返されて色を作られる様は圧巻でした。
内容とは直接関係しませんが、染めの特徴として”不規則さ”という言葉を使われていました。
確かにベタな印刷や塗りとは違う色調の濃淡など不規則な模様、曖昧さがあります。

この不規則さに興味をもって調べてみると「草木染黒染め絹布の色彩的特徴」山﨑和樹著
という論文がありました。
その中でこの特徴を分析する手法として「SD法」とありました。

SD法とは、Semantic Differential methodの略で心理学的測定法のひとつです。
ある事柄に対して相反する形容詞の対を設定し、尺度を設けて測定します。
形容詞の種類とそれぞれの度合いによって対象の特徴を捉えようとするものです。

例えばいろいろな方法で染め出した黒色について、
高貴なー庶民的、高価なー安っぽい、フォーマルーカジュアル、女性的ー男性的、冷たいー暖かい、
など対照的な形容表現を段階付けして数値化します。
それによって染めの方法の特徴を見いだしていくのです。

さらに例えば医師という職業について、
良いー悪い、美しいー汚い、動的なー静的な、軽いー重い、緊張したーゆるんだ、鋭いー鈍いなど。
とある研究の女子大生の回答ではそれぞれ7段階(良いを7,悪いを0など)で、
良悪は5、美汚は4、動静は5、軽重は1、緊緩は6、鋭鈍は6でした。
ちなみに教員という職業では
良悪は5、美汚は4、動静は5、軽重は2、緊緩は5、鋭鈍は5
フリーターでは
良悪は3、美汚は3、動静は4、軽重は6、緊緩は2、鋭鈍は3でした。

どうでしょう。何となく特徴を捉えられるのではないでしょうか。
ただし形容詞の選択にはかなり注意が必要ですし、
すべてを7段階という連続値に置き換えたことの解釈は難しそうです。
しかしそれ以上にこれまで漠然と感じていた、抱いていたイメージが見える化されるメリットがあります。
これは曖昧模糊としたものの特徴をとらえるには有効だと考えます。

さてここまで染め物の不規則性に始まり、捉えにくいものや客観的数値化出来ないものの意味構造を明らかにしようとしてきましたが、
我々の領域でも痛みを10段階で患者さんに問うという手法があります。

日々の診療の中では”痛み”のように病気の鑑別に直結する訴えばかりではありません。
高齢者診療で多いのは「何となく調子が悪い」です。
”何となく”とは痛みのような段階を問いにくいものです。
”調子”とは痛みのような症状とは言いにくいものです。
まさに不規則で曖昧です。

この状態を掴むために、
頭が痛いんですか、とか胸が苦しいんですか、とかお腹が張るんですかなど
医学的に意味づけしやすい問いかけをし直しています。
しかしそもそもつかみ所がない訴えなのですから、
それに対してはむしろ曖昧な指標を示した方が良いのかもしれません。

例えば
「何となく調子が悪いんですね、色に例えると何色ですか?」
「絵に描くとすると、どの図形に近いですか?」
どうでしょう。
曖昧なものをいきなり数値化したり既存の尺度に導くのではなく、
間にさらにワンクッション敢えて曖昧なものを挿入するのです。

紙面の都合上、ここで一旦区切りますが、
大学病院の専門外来では思いつかなかったであろう、
患者の訴えの解析です。
もう少し具体化します。

院長 小西宏明
 

2020-03-21 05:48:00

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