「働かざる者食うべからず」
真面目に働かないとダメだよという戒めとして
よく使われます。
あくまで力点は「働こう」にあり、
「働いていないなら食べてはいけない」という使い方は誤りです。
医学部をはじめ医療関係の資格を取得する大学や専門学校では
以前から学生の学力低下に苦慮しています。
授業内容を理解出来ないのか、やる気がないのかは個別事案だと思いますが、
いずれにしても必要な単位が取得出来ない、合格点数が取れない学生がいます。
必要な能力を身につけていない者が医療現場に出ることは
最終的には患者の不利益につながります。
元を正せば何故に授業についてこられないような学生が入学できたのでしょうか。
医学部であれば、医師になりたかったわけでは無く、単に成績優秀であったために入学した者もいます。
専門学校であれば高校推薦だけで入学出来た場合もあります。
一般の感覚としては医療を志望し入学していると考えるのが当然だと思います。
ところが必ずしもそうではない学生もいます。
大学病院では我々は学生講義、学生実習も担当していました。
試験も作成しますし、合否判定、進級判定にも関与しました。
授業は高校までとは全く趣が違いますし、
医学部に関して言えば暗記が中心にならざるを得ません。
しかも量が膨大です。
これは看護やその他の職種でも同様だと思います。
進級に問題となる学生に見られるのは
「やる気のなさ、やる気が出ていない」ことです。
ただ単に怠けている場合もありますが、医療の道に進むことに気持ちが固まっていない場合もあります。
確かに高校生、若干18歳で将来の職業を決めて入学することには
無理が生じることも理解出来ます。
医療関係の学校に進学することは一方では「つぶしが効かない」とも言えます。
授業を受けている間に「何か自分の将来像とは違うな」と考える学生はまだ良い方です。
「何をしたら良いかわからない、見つからない」という学生もいます。
将来は働いて所得がないと生活出来ないことはわかっていても、
それが職業選択や目の前の学業に結びつかない。
医学部でも数年に1人は進路変更のため自主退学する生徒はいます。
医師会の看護学校でも同様のケースがあります。
私は高校生活がとても重要だと考えています。
中学までは義務教育ですが、高校は受験して入学しますから
志望校を決める段階で一度自分の将来について考える機会があったはずです。
そして高校入学後は、さらに将来に向かって煮詰めていく時間です。
就職するのか、大学進学か、どんな学部で学ぶのか。
とりあえず進学してからもっと考えようという方針もあろうかと思います。
しかし多くは教育機関を卒業して仕事に就き、
生活の糧である収入を得ていかなければなりません。
「働かなければ食べていけない」のですから。
今、いろいろな原因は考えられますが、
医学部はものすごく狭き門になっています。受験の倍率は上昇しています。
一方で看護専門学校などは多くが定員割れしています。
もう少し高校生の間に自分の将来について真剣に考えるべきだと思います。
大学生は就職活動において自分の強みと弱みを自己分析することが通常です。
高校はその前段階としても貴重な時間です。
我々の世代はもう高校生と接することはありません。
さらに個人開業すると若い研修医でさえも接したり、指導する機会はなくなります。
看護師など職種が違えば皆無です。
私の卒業した高校ではOBと交流する場が設けられています。
将来目指すべきことを考える上でとても重要なチャンスであり、
自分が高校生の頃を考えると羨ましい制度です。
留年、退学、進路変更をする学生の話を聞くと、
やはりもっと高校生にアプローチすべきではないかと思います。
いくらネット利用が当たり前の世代であっても
皆が自主的に将来についての情報収集が出来るわけではなく、
各種職業の重要ポストに就いている”大人”が
リアルに情報発信してあげることが必要です。
大学や専門学校を選択する段階で
もう少し学生を刺激してやって良いと考えています。
年齢が上がれば上がるほど、
残念ながら将来の選択の幅は狭くなるのですから。
院長 小西宏明
2023-05-23 21:21:00
クリニックブログ
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