来年度の診療報酬改定の議論が沸騰しています。
直近の話題としては外来管理加算や特定疾患療養管理料などの
医学管理料がその内容からすると重複算定だと問題視されていました。
いわゆる保険者(健康保険組合連合会)からは
その中の外来管理加算を廃止せよということです。
さて患者ひとりが医療機関を受診(定期通院)した場合、
医療費の中には検査や処置などと共に
「再診料」と「医学管理料」があり、
合計すると約1/3を占めています。
例えば検査や処置であれば医療行為として患者は認識することが出来、
それぞれに医療費が発生することは
「対価」としてわかりやすいと思います。
それに対して問診や診察にあたる部分は、
医師に質問した、医師から説明や指導を受けた、
聴診や視診や触診されたということになります。
これらの医療行為に対して対価が発生することは当然ですが、
それが○○管理料という名目で複数存在することは
一般には知られていないかもしれません。
しかもどれがどの医療行為の対価か区別しにくい点を保険者が問題視しているわけです。
実は再診すると毎回検査や処置などありませんから、
いわゆる医師の診察の対価は「再診料」と「医学管理料」だけになります。
もし外来管理加算が無くなると、それは即、診察料減であり、引いては収入減です。
医師会として猛反発することは至極当然です。
乱暴に総括すると
保険者は何の対価かわかりにくい医療費は削減したいわけです。
医師会(医師の側)としては医師の問診や病気の予防、生活指導の対価を減らすことはあり得ないわけです。
それに対して保険者は、
「だったら病状や治療の説明を書面で残しなさいよ」と言うわけです。
それに対して医師側は、
「診療の手間が増加する、そもそも全ての医療機関が電子化しているわけではない」と現実論を言います。
保険者の提案の背景には医療介護費用の増大があり、
健康保険組合によっては財政破綻して国民健康保険へ移行しているところもあります。
要するにお金が足らないのです。故に削減できる項目を探した結果です。
このような議論は毎回の改定で繰り返されて、
なんとかかんとか妥協点、落とし所が見出されています。
それが薬価低減へのしわ寄せです。
すでに保険料と医療介護費のバランスは破綻状態にあり、
堂々巡りの議論にも限界がでます。
そろそろ国民皆保険制度の根本にメスを入れて
全ての診療行為を保険で賄う形式から
一部自由診療を取り入れた混合診療を進めるべきだと思います。
今インフルエンザワクチンの接種がピークですが、
高齢者を除き、その料金は医療機関ごとに自由に設定されています。
少しでも安いところを探している人もいますし、
総合病院は料金を高く設定して接種者の過度な集中を防止しています。
これは正に市場原理です。
医療は国民の安心安全に不可欠ではあっても
実態に即した対応もまた不可避です。
外来管理加算の議論よりも
初再診料を自由化して保険対象から除外すれば、
約1/6の医療費の削減につながります。
医師本来の診療行為の対価を削るなどの議論をする前にやることはあります。
このまま再び薬価の低減にしわ寄せが行けば、
今、極度に不足している咳止め薬のような事態が
他の薬剤にも広がることは容易に想像出来ます。
混合診療は決してパンドラの箱を全面開封することではありません。
やり方次第で「もろはの剣」も使えます。
院長 小西宏明
2023-11-11 20:08:00
クリニックブログ
| コメント(0)