今日は内科会主催の講演会でした。
札幌の病院から講師の先生をお招きして
現在のコロナ感染症の状況と高齢者へのワクチン接種、そして注意点について
ご指導頂きました。
端的に言えば、コロナ感染症は未だに侮れない疾患であり、
重症化予防の観点から高齢者へのワクチン接種が推奨されるということです。
5類移行前のように感染者の全数把握はされておらず、
定点観測のため絶対数は当然少なく現れますが、
実際には多数の感染者がいます。
それを裏付けるデータとして札幌市の下水検査では
今なお右肩上がりの高い水準でコロナ感染後のウイルスRNAが排泄されています。

また一方でコロナウイルスへの既感染を表すN抗原の割合は10代、20代の若い世代で50%以上で、
それに対して60代では未だ30%台です。
解釈は様々ですが、若い世代は無症状感染か軽症で治癒した蔓延状態と考えられ、
高齢者では予防の甲斐あって感染率が低い代わりに、
これから感染する可能性があるとも解せます。
今はもう感染源を探ることは不可能なくらい市中にコロナ感染者が身近にいる状態で、
重症化しやすいにもかかわらず未感染者が多いことを考慮すると
益々高齢者への対応が重要になります。
先生のお話によれば
コロナで病院に入院するものの重症化する人以上に、
最終的には持病が悪化して死亡退院する人が多いそうです。
何せ平均年齢が85歳近い状況ですから。
コロナの恐さはここにあると言えます。
それに対して我々が出来ることは
ワクチン接種と感染の早い段階での抗ウイルス薬の投与だそうです。
しかし実際の印象では
この対応策はなかなかハードルは高いと言わざるを得ません。
何故なら重症化している人が少なくなっているからです。
これは病院とクリニックでは見えている景色、扱う患者像が違うからだと言えます。
このような状況下で、少なくとも陽性確認、即抗ウイルス薬投与には
結び付けられません。
さらに数万円の薬代の自己負担もハードルです。
そしてワクチンとなるわけですが、
副反応が少しでも辛かった方は今回から遠慮される割合が増えると思います。
一方で余病が多い人や重度の方は自ら定期接種を希望されるでしょう。
残る対象高齢者はどのように判断されるか。
迷ったらかかりつけ医に相談が大半かと考えられ、
我々は今日の講演を拝聴して熟考しなければなりません。
おそらくリスクが高いと判断される人には推奨します。
しかし以前のように一律に接種しましょうと言うべきかどうか。
一般に医療従事者の説明に対する患者の理解は100%ではないことが知られています。
「理解して頂けない」とか「医師の説明が不十分」とか
もう日常茶飯事です。
これは先ほどと考え方が同様なのですが、
医療従事者と患者では見ている景色が違うからです。
患者さんには元気な自分が見えています。例え検査が陽性でも症状が軽微な自分がいます。
それに対して我々が見ているのは、言わば病気の経過を俯瞰した景色です。
すなわち「悪化することが予想できる」というものです。
この話は長くなってしまうので一旦終了しますが、
我々に課せられたことは今回のような忠実な情報収集だと考えています。
自分の考えの根拠と出来る事実の収集です。
先生のご講演はとても平易な言葉で端的になされ興味津々でした。
途中のブレイクのスライドでは
コロナ禍においていろいろな放送局のテレビに出演したことに触れられ、
ギャラなしで縫いぐるみをもらっただけだと言われていました。
専門家としての情報発信もまた医師の使命と言えます。
とても有意義な時間を過ごさせて頂きました。
院長 小西宏明
2024-09-25 22:11:14
クリニックブログ
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