今日は11月に毎年開かれる道南医学会の準備委員会でした。
特に例年と変更点はなく、ひとつひとつの事項の再確認で終わりました。
ただし今後を見据えて課題とされたのは循環器や脳神経系の演題の少なさでした。
コロナ禍を除いても数年前から徐々に応募が減少してきました。
学会にもレベルがあります。
専門分野の”本会”と位置づけられるものは演題応募が多く、
審査も厳しいため発表への採択率は10から20%程度です。
因みに米国の胸部外科学会は数%の狭き門です。
道南医学会はこの地区唯一の学術集会であり、
大学のない道南地区の医学の発展に寄与する目的があります。
そのため応募演題はすべて発表して頂く方針で、
数年前からは研修医部門も設けて、
若い先生方にも発表の機会を与えるようになりました。
にもかかわらず一部の分野で応募が低調な理由は
診療が多忙であることがその一因でした。
会のメンバーである某病院長のお話では
4月からの働き方改革によって学会発表、その準備は労働時間に正確に組み入れなければならず、
診療で忙しい場合には時間外労働を強いることにもなりかねないようです。
また一方では上司が若手医師に対して学会発表を強制することは
パワハラにも該当する場合があります。
学術発表は我々医師にとって求められる
臨床、研究、教育の3本柱の中で重要な取り組みです。
しかし今、それが時間的制約、強制という別の問題から
制限を受けかねない状況に陥っているのです。
私が大学病院にいたときの印象は
昨今の若手医師は研究よりも臨床を重要視する傾向が高まっていることです。
それは医学博士の取得よりも指導医や専門医の取得を優先することでもわかります。
確かにいわゆる「頭でっかちな医者」を作らないという、
医師は患者を診るものであり、ネズミや犬や試験管を観るものではない意味においては
正しい方向性だと言えます。
まあこれは極端に説明したものであって、
実際には若い時期に研究の目(視点)や研究の芽を磨くことは
将来にわたり患者を診療する上で大変重要です。
「観察眼」を磨くことです。
私は若い時期、特に研修医、後期研修医時代には
出来るだけ症例報告の論文を書くこと、
そして可能なら留学を経験することを推奨しています。
20歳代、30歳代は柔軟な思考が出来、
鋭敏な感性が養われる時期であって、それは二度と訪れないからです。
会の最後に
医師会が主導的に各医療機関に演題応募を促す方策を考えることが提案されました。
大学医学部がない地区だからこそ
先達が知恵を絞って立ち上げた学会です。
有効に活用しなければならないと思います。
院長 小西宏明
2024-10-01 21:19:00
クリニックブログ
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