NHKの特集番組で医師不足と医師の偏在が取り上げられていました。
地方だけではなく都市部近郊であっても人口当たりの医師不足が顕著になっています。
その要因のひとつは医師の偏在、都市部への集中です。
もうこれは以前からずっと言い続けられていたことで、
未だに有効な対策はありません。
と同時にこの問題は若手医師と中堅医師に分けて考える必要があります。
若手医師についてはそれを顕性化したのは新研修医制度の開始と
大学医局からの医師派遣の縮小があると思います。
医学生や若い医師は症例数の多い病院や指導体制がしっかりした病院を選択していきます。
そういった選ばれる病院の多くは都市部、地方であっても中核地域にあり、
中心から離れた場所にある病院は敬遠されがちです。
私の頃は卒業生のほとんどは自分の大学病院で研修して
同時に医局に入局していました。
私のように研修病院を受験したのはごく少数でした。
当初から心臓血管外科に進むことは決めていたため、
むしろ外科医としての幅広い経験を積むために
研修医制度が確立した病院で様々な診療科をローテーションする方法を選択したのです。
一方中堅医師はどうでしょうか。
実は喫緊の問題となっている医師の偏在の本質的な部分、
つまり不足している医師とは自らで診療を完結出来る医師であり、
所謂”即戦力”となる医師です。
その年代の医師がどのようなキャリアパスを描いているかによって
働きたい場所は変わります。
当然研修医など若い世代とは事情は違います。
例えば専門医としてのステップアップ、
結婚、子育て、子供の教育、そして親の介護などなど。
個人的には若手医師の偏在はある程度許容せざるを得ないと思います。
やはり大きな理由は医師としての出発点、初期教育が欠かせないからです。
症例数の多い、教育が充実した病院でスタートを切ることです。
「鉄は熱いうちに打て」
では中堅医師については、
都市部や中核となっている総合病院との病病連携を考えてみてはどうかと思います。
患者さんについては病院と診療所の連携、中小病院と大病院、大学病院との連携が
制度としても確立してきています。
同様に医師についても医療機関同士で連携して、
例えば1年でもローテーションで小さな病院の診療応援をするのです。
以前、大学病院の医局が行っていた方式です。
実は函館でも医師会病院では東京の順天堂大学病院から整形外科の医師が1から2年ごとに
ローテーションして診療しています。
番組で取材された病院では医師不足のため来年度に二次救急当番から撤退せざるを得ないと言われていました。
今でも大病院の医師が週に1回中小病院の外来応援してことがありますが、
その延長として1年程度常勤医として診療を担うというローテーション方式はどうでしょうか。
イメージとしては医師についても「地域で地域を支える」というものです。
実は医師偏在の問題はもっと根源を辿れば、
医師が地方へ移動するか、
患者が中央へ移動するか、
シンプルに考えれば二者択一のはずです。
患者からの視点だけで問題解決を図ろうとしても
もう難しい時期に来ています。
日本の医療はフリーアクセスが特徴とされてきましたが、
そこにも問題があり、医師偏在の解決の鍵があると思います。
院長 小西宏明
2024-10-23 21:03:53
クリニックブログ
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