先日静脈瘤治療には欠かせないレーザーカテーテルの業者から
新しい術式の申請が認められたと連絡がありました。
最終的に保険収載されて点数が決まると一気に普及していくはずです。
下肢静脈瘤へのカテーテル治療は専門医であることの他に、
実施医としての資格申請が必要で、
従来からある術式のように研修医でも施行可能なものではありません。
つまりある程度この分野における知識や経験が前提となる術式だということです。
にもかかわらず保険点数は数年前に一気に30%減額され、
さらに今年も少し減額になっています。
新しい技術が普及して広く安全に行われるようになることで、
保険点数が下げられることはよく見られる対応ですが、
手術を行うための資格が必要であるにもかかわらず、
その専門性が全く考慮されないやり方は如何なものかと思います。
そもそも日本独自の保険点数制度には
医師の経験年数や専門性が考慮されません。
同じ術式であれば研修医が行っても指導医や部長、科長クラスが担当しても
同じ料金です。
これについては以前からあらゆる外科系診療科から問題視されています。
手術の難易度に応じて資格制度を設けることは患者の安全を考えて当然ですが、
そのために研鑽を積んだ医師に対して何も技術料が考慮されないのです。
一方で保険診療を取り扱う立場のことを考えると、
制度設計、点数配分が難しいであろうことは容易に想像出来ます。
術者の技量評価に関わるわけですから。
これを最も単純に解決する方法のひとつが自由診療です。
手術料を病院ごとに術者自らが自由に決定していくのです。
これは欧米では当たり前です。
陶芸教室で造った器と人間国宝の器が同じ価格であるはずはありません。
さらに手術は医師だけで行うことは出来ませんから、
病院の規模や専門度に応じて対価を決定する必要があります。
大学病院から個人開業へ転じて
常々感じるのはやはり医師の技術料評価の困難さです。
詳細な問診、丁寧な診察から鑑別診断を練って
仮説に基づいた検査を行い、最終診断に至る。
おそらく医療費としては必要最小限だと思います。
しかし他方、いきなりCTやありとあらゆる血液検査をサッとやれば、
確かに異常が直ぐに検知出来るかもしれませんし、医業収入は高額です。
但しそんな医療を行っていると国の財政は逼迫しますし、
医師の質はどんどん低下するでしょう。
質の高い医療を目指そうと努力すると
病院の収入は減るという理不尽な状態があるのです。
今回も新しい術式が認められたとのことで、
内容的には高度な技術を要するものです。
是非とも妥当な点数による保険適応として頂き、
医師の日々の努力が報われるようにして欲しいと思います。
難しい技術であるが、患者さんに有益であるなら
それなりの対価は認めていかなければなりません。
院長 小西宏明
2024-10-29 21:28:00
クリニックブログ
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