年齢を重ねると様々な病気になり、
治癒した場合でも治療内容がその後の別の病気の診断や治療に役立ったり、
影響したりすることがあります。
例えば虫垂炎の手術をしたことがあれば、
何年も経ってから癒着によって腸閉塞を起こすかもしれません。
しかし個人で詳細な病歴を記憶することは難しく、
またその内容も100%とは言えません。
ここ道南地区では地域の医療ネットワークシステムが全国に先駆けて開始され、
そして今なお利活用する医療機関が増えています。
同種のネットワークは沢山構築されましたが、
資金や人員不足、そして利用率低下などで解散を余儀なくされ、
函館ほど長く充実した機能を維持出来ている地域は少ないのです。
このシステムのお陰で、
少なくとも市内の医療機関で受けた診断や検査、治療内容について
過去に遡って閲覧することが出来ます。
これによって患者や家族からの情報を補完することが可能です。
そこで出てくるのが患者個人が病歴データを管理するシステムです。
これがPersonal Health Record(個人健康記録)です。
これについては以前のブログでも触れましたが、
超高齢社会において、さらに日本のように容易に医療機関を受診出来る環境の中では
記録の量と質はおそらく他の先進国とは比較にならない可能性があります。
ただ如何せん、個人情報のデジタル管理については国民の理解は十分とは言えません。
実際には情報漏洩への不安が大きいことが妨げになっていると思います。
今週も初診患者さんについてネットワークシステムへの登録をご承諾頂き、
過去の病院での検査、診断、治療内容を確認することが出来ました。
今回もと敢えて言えますが、
患者さんの記憶の一部は実際の内容とは少し違っていました。
故にこのネットワークシステムの有用性が証明されたことになります。
実は函館発祥の本システムは非常に汎用性が高く、
全国のみならず登録許可さえあれば外国の病院ともつながります。
以前に肝臓移植の患者さんについては
北海道大学と米国ピッツバーグ大学の医療情報が共有されていたと聞きました。
医療はその地域内で行われることがほとんどですが、
大学、就職、結婚、旅行などで全国の医療機関で治療を受けることもありますから、
PHRの有用性は高く、応用範囲は広くなります。
今回の患者さんの事例を振り返っても
出来るだけ正確な病歴を知ることは目の前の治療においてとても重要です。
拙速であってはならないものの、
PHRについてまずは医療従事者の間で認知を進めなければならないと思いました。
院長 小西宏明
2025-03-05 21:43:11
クリニックブログ
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