今日は青森の病院で外来と手術を行いました。
私の手術を担当する責任者から新しい看護師が見学に入る旨を知らされました。
通常だと”外回り”から見学して手術全体の流れや内容を把握してもらうのですが、
いきなり”器械だし”看護師の横について説明を受けるとのことで驚いてしまいました。
確かに手術室看護で最も重要なのは器械だしで、
覚えることも沢山ありますが、全くどのような手術かを知らない状態では如何なものでしょうか。
「これを準備して、これを先生に渡して・・・」
器械の種類、使い方、出す順番などを覚えれば何となくやれそうな感じにはなります。
新人教育には大きく2つの手法があります。
「即戦力になるための手順型教育」と
「理論を理解して応用できる力を養う背景理解重視教育」です。
前者のメリットは即戦力になり、現場の他のスタッフの負担が減ります。
本人も出来ることが増えた感じを持ちやすいと言えます。
デメリットもあります。マニュアル通りで応用が効きにくく、
イレギュラー対応に弱くなります。
さらに何故そのようにやっているかを理解しないため、改善提案につながりません。
後者のメリットは応用力や自立性が育ち、イレギュラーに強くなります。
結果として成長スピードは後半で加速します。
デメリットは、立ち上がりに時間がかかることで現場の即効性が乏しく不満が出やすくなるかもしれません。
本人もわかっていてもなかなか出来ないギャップに落ち込んでしまう場合もあります。
今日みた光景はまさに「手順型教育」でした。
しかも少し乱暴なくらい拙速だと思いました。
せめて初回はどんな手術かを外から見学させるのが常套手段ではないでしょうか。
実は当院では今月1日から新しい看護師が入職しています。
外来での内科患者中心のクリニックと違い、外科の定時手術や医療脱毛など多彩な診療を行っているため、
習得して頂く内容が多岐に亘ります。
確かに総合病院と違い限られたスタッフ数で現場を回すため
即戦力に期待したいところですが、私が期待するのは理解重視型の新人教育です。
何故なら当院は定型というよりイレギュラーな対応が必要な場面が多いからです。
そもそも外科手術はイレギュラーな事態を想定して
繰り返し繰り返し定型作業の精度を高めていくものです。
そこには応用力、自分で考える力が必須です。
先の新しいスタッフには主に主任が教育を担当していますが、
期待通りの手法が採られており、
確かに本人もギャップを埋めるべく一所懸命です。
未だ数日ではありますが、十二分に伝わってきます。
手順型教育は短期的には現場の負担が軽くなりそうですが、
少なくとも外科治療においてマニュアル通りにしか動けないようでは困るのです。
一緒に手術をするには考える力を養って欲しいのです。
そしてさらに言うならば、新人は雛鳥と同じです。
ひよこは最初に見たものを親だと思う現象があり、
これは「刷り込み」、「インプリンティング」と言われます。
鳥類の雛が生まれて間もない時期に最初に出会った動くものを親だと認識する学習能力です。
これが親鳥を追跡する行動となり、親鳥に依存して生き延びるための”生存戦略”と考えられています。
新人教育も同様の側面があり、
本人の能力は当然ですが、教育者の力量も重要で、
我々外科医も新人の頃に「どの先生に師事するか考えろ」と教えられました。
技術の素晴らしい先生、人として尊敬できる先生です。
今日の手術見学で何を学べたかはご本人次第ですが、
手順型教育優先の手法は手術治療においては必ずしも得策ではないことを
次回、”親鳥”に申し入れようと思います。
院長 小西宏明
2025-09-11 21:40:00
クリニックブログ
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