大学病院では他院の治療内容について違う専門医の意見を聞きたいという依頼は多数ありました。
私も何度か携わったことがあります。
外科系ですから、手術適応や手術方法、そして術後に発症した合併症についてでした。
ただ医療訴訟に関わりそうなものは事前に事務サイドで取り扱わないことになっていました。
開業してからはなるべくセカンドオピニオンは承らないことにしていましたが、
今年はこれが2回目でした。
特に今回はどうしてもということで遠方からご来院されました。
事前に現在通院中の病院に資料作成を依頼して頂き、
内容を把握して準備しました。
資料を拝見する限り、現在の治療水準に照らし合わせて妥当なものでした。
それ故に何に疑問を持たれているのかなと思っていました。
お目にかかって事情をお伺いすると、
結論としては治療への不安、不満や不信ではなく、
いわゆる説明不足でした。
実際に治療効果は出ており、患者さんも日常生活が快適になられていました。
元気に回復しているので濃厚治療の必要性に疑問を感じ始めておられたようです。
一般に治療によって病状が改善して
最終的には治療終了となるのが「病気の治療」だと思います。
しかし病気によっては完治や回復は難しく、
良い状態を出来るだけ長く維持することが目的である場合もあります。
この部分を理解して頂くためには丁寧な説明、
わかりやすい説明が医師には求められます。
身近な例では高血圧や糖尿病、脂質代謝異常があります。
薬を飲んで血圧が下がると治ったと思って通院を中断される人や
薬を減らしたいと思う人もおられます。
血圧は未だ自宅で測定して治療効果や身体の状態がわかりますが、
脂質代謝異常などは血液を検査しない限り良くなっているのか悪くなっているのかさえわかりません。
果たして薬が必要なのかと思われるのは最もなことです。
ましてや身体が元気であったり、症状がないと
今の治療継続に疑問が湧くことは十分に理解されます。
これを説明するのが我々医師の役割ではありますが、
最大の難関は”時間”です。
特に総合病院の専門外来は非常に混雑しており、
ひとりの患者さんに掛ける時間は限られます。
今は病院の多くが電子カルテを導入して予約システムを運用しています。
だいたい30分をひとつの診察枠として
そこに複数名の予約を入れます。
大学病院で最初に電子カルテを始めた際はひとり5分と仮設定しましたが、
結局30分に10名前後入れておられる先生が増えました。
でなければ決められた自分の外来時間内に終わらないからです。
大学病院ではセカンドオピニオンは1時間を原則としていましたが、
今は30分に設定しています。
予め他院の診療経過の資料を読み、説明に必要な資料を準備しておけば
ほぼ話はスムーズに進められます。
治療、特に手術が関係する内容については患者が納得して前に進むには
セカンドオピニオンという方法は大変有用だと考えています。
仮に時間問題が解消出来る術があったとしても
複数の専門医の意見を聞いてみることは良いと思います。
少なくともワイドショーやネット検索の情報よりも実際のリアルな医療内容がわかります。
治療は標準的なものがある一方で人の身体は千差万別で、
オーダーメイドでなければなりません。
自分の身体を知って治療を続けることが第一義です。
「継続は力なり」です。
院長 小西宏明
2025-10-01 21:35:37
クリニックブログ
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