2年間にわたり、北海道医師会の理事として日本医師会の委員会メンバーを務めました。
日本医師会の委員会は概ね2年任期で構成され、日本医師会長から提示された命題について議論し、一定の方向性や見解をまとめる仕組みになっています。
もちろん、2年間で完全な答えを出すというより、日本の医療制度や保険制度における本質的な問題、あるいは時代の変化の中で生じてきた課題について、その時点での考え方を整理する意味合いが強いと感じました。
私が担当したのは、全国の医師会が運営する「共同利用施設」に関する委員会でした。
具体的には、医師会立病院、健診・検査センター、看護学校、夜間休日急病センターなどです。
もちろん、全国すべての郡市医師会がこれらを運営しているわけではなく、全く事業を持たない医師会もあります。
その中で函館市医師会は、病院、検査センター、学校、急病センターの4事業すべてを担っている極めて稀な存在であり、事業規模は総額約60億円にも上ります。
委員会では事業ごとに担当が分かれ、私は健診・検査センター部門を担当し、全国の先生方と情報交換を行ってきました。
平凡な表現ですが、各地域は実に様々な問題を抱えており、どこかの成功例がそのまま全国に当てはまるわけではありません。
皆さん、それぞれ大変なご苦労をされながら事業を継続しておられました。
振り返ってみると、これらの事業はすべて、その時代における地域医療の必要性から生まれています。
開業医が患者を紹介・入院させやすくするための「病院」。
民間検査機関が少なかった時代に、医師会員が利用しやすいよう整備された「検査センター」。
地域の病院や診療所へ看護師を供給するための「看護学校」。
そして住民の夜間休日診療を支える「急病センター」です。
ところが、現在は設立当初とは事情が大きく変わりました。
病診連携は進み、医師会病院でなくとも地域の総合病院が積極的に紹介患者を受け入れる時代となりました。
「いつでも紹介を受けます」と各病院が“敷居”を低くしています。
検査についても民間センターが充実し、価格競争力でも優位に立っています。
看護師養成では若年人口そのものが減少し、医療職を志望する高校生も減っています。
夜間休日診療についても、医師会員の高齢化や引退によって人員確保が急速に難しくなっています。
つまり総じて言えば、「医師会が担わなければならない理由」が以前より乏しくなってきたのです。
さらに追い打ちをかけているのが人口減少と患者減少です。
今後は“医療規模の縮小”を前提とした展開を考えなければならない時代に入っています。
函館市医師会でも、医師会病院の経営問題や施設老朽化に加え、看護・リハビリ学校の定員割れや中途退学が続いています。
4事業を維持するだけでも容易ではなく、少なくとも「プラスマイナスゼロ」で経営することさえ難しくなりつつあります。
これは函館だけではなく、全国共通の問題です。
ここまで来ると、「医師会の役割とは何か」という原点に立ち返らざるを得ません。
少なくとも、4つの共同利用事業を通じて会員医療機関を支援するという役割については、一定の使命を果たした部分もあるのではないでしょうか。
地方病院の統廃合は不可避ですし、看護師養成も専門学校から大学教育へとニーズが移行しています。
検査センターも、今や民間との価格競争では太刀打ち出来ません。
事業を立ち上げ、拡大していくことには達成感があります。
しかし、縮小や撤退には別の難しさがあります。
それは、ある意味で「断捨離」に近い作業なのだと思います。
おそらくこの委員会も、今年度新たな命題を与えられて継続されるはずです。
しかし、そろそろ「どう拡大するか」だけではなく、「どう手仕舞いするか」をテーマに情報交換しても良い時期ではないかと思っています。
院長 小西宏明
2026-05-26 22:09:00
クリニックブログ
| コメント(0)