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なぜNHKのパンフレットは持ち帰られるのか

なぜNHKのパンフレットは持ち帰られるのか

4月9日にNHKの「トリセツショー」で「足のSOS」が放映されました。

内容は、動脈の病気である「足梗塞」と、静脈の病気である「下肢静脈瘤」についてで、それぞれ旭川医科大学心臓血管外科の東教授と、お茶の水血管クリニック院長で日本静脈学会理事の広川先生が出演されていました。

トリセツショーでは、放送内容を簡潔にまとめた家庭保存用パンフレットがホームページに掲載されます。そのため当院でも印刷したものを約2か月間待合室に置いていました。

驚いたことに、毎週準備した5部があっという間になくなるのです。

もちろん放送直後には、「テレビを見て心配になった」という初診の問い合わせもありました。しかし、それ以上にかかりつけ患者さんが興味を持って持ち帰られている印象を受けました。

一方で、厚生労働省や日本医師会、市町村からは健康管理や病気予防に関するパンフレットが定期的に送られてきます。医療機関を通じて配布することを目的としたものですが、こちらはほとんど持ち帰られません。

見た目だけなら、むしろ出来合いのパンフレットの方が立派です。

トリセツショーの資料は、私がパソコンでA4用紙に印刷し、数枚をホチキスで綴じただけです。表紙も白黒ですし、内容も多少のカラー写真や図表がある程度で、決して華やかではありません。

それなのに手に取られる。

何となく、「薬は出来れば飲みたくないし、処方されても飲み忘れるけれど、健康食品なら試してみたい」という人の心理に通じるものを感じました。

その理由を考えてみると、二つの要因が思い浮かびます。

ひとつ目は、「タイトル」です。

「足のSOS」という言葉は端的でインパクトがあります。何だろう、と興味を引きます。

一方、行政や学会のパンフレットは「生活習慣病」「高血圧予防」など、いきなり病名や注意喚起から始まります。どうしてもネガティブな印象があり、「どうせ注意される内容だろう」と思われてしまうのかもしれません。

二つ目は、NHKというブランドです。

当院に通院される年代を考えると、NHKを視聴している方は少なくありません。放送時間も木曜日の夜、ニュースの後という見やすい時間帯です。

さらに石原さとみさんが司会を務め、フクロウのキャラクター「トリンキー」もお馴染みです。内容を聞く前から、「トリセツショーだから面白そうだ」と感じさせる仕組みが出来上がっています。

健康情報は年齢を重ねるほど重要になります。

実際、診療の現場でも新聞や雑誌の切り抜きを持参されたり、テレビ番組の内容について質問されたりすることは珍しくありません。

しかし本来、その患者さんに必要な病気の説明や情報提供は、私達医師や看護師が日々行っているはずです。

では、医療従事者の説明力やプレゼン能力が低いのでしょうか。

もちろん改善の余地はあると思います。しかしそれ以上に、病院や診察室という特殊な環境が影響しているような気がします。

診察室で語られる健康指導は、患者さんにとっては時に「注意されること」や「生活習慣を改めるよう求められること」です。言わば“お叱り”に近い側面もあります。

誰しも病気は避けたいものですが、同時に生活の細かな部分まで指摘されたくはありません。

そう考えると、テレビ番組のように興味を引きながら自然に情報を届ける工夫は大変参考になります。

今回の配布資料への反響は、健康情報の伝え方について改めて考える機会となりました。

限られた診察時間の中で、本当に必要なことをわかりやすく、そして患者さんの心に残るように伝える。

それはまだまだ修行が必要な分野だと感じています。

院長 小西宏明

2026-05-31 22:03:00

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