また熊本で大きな地震が発生しました。
当院スタッフにも熊本県出身者がおりますが、すぐにご家族の無事が確認でき、とりあえず胸をなで下ろしました。
一方で、夜になっても被害状況は刻々と更新されています。
特に大規模商業施設で被害が報じられており、多くの従業員と連絡が取れていないとの情報もあります。二次災害の危険性もあるため、救助活動は慎重に進められているのではないかと思います。
折しも今日は医師会理事会がありました。
会長からは、函館地区では市立函館病院に加え、五稜郭病院が新たに災害拠点病院となったとの報告がありました。
医療機関は「第四のインフラ」とも言われます。
災害時には、水道や電気、道路と同じように、地域の命を支える重要な役割を担います。
市内に同規模の災害拠点病院が二つあることは、救助・救命活動の面でも大変心強いことだと思います。
報道によれば、済生会熊本病院ではすでに多数の傷病者を受け入れているとのことです。
このような規模の病院でも、一日にこれだけ多くの緊急患者を受け入れるには、医師だけではなく、看護師、検査技師、放射線技師、薬剤師、事務職員など、病院全体の総力が必要になります。
平時は病院経営の観点から病床を効率よく運用していますから、急な大量受け入れは決して容易ではありません。
おそらく院内では、医療スタッフが総動員で対応されていることでしょう。
今回の報道を見ていて、真っ先に思い出したのは東日本大震災でした。
私は当時、鹿児島へ出張中でしたが、幸い当日のうちに家族の無事を確認することができました。
予定を切り上げて翌日に羽田へ戻ったものの、交通網は寸断され、高速道路も通行できない区間が多くありました。
大学病院へ戻ることができたのは発災から二日後でした。
病院では救急部を中心に、建物の外へ応急処置用のテントが設置され、いつでも多数の患者さんを受け入れられる体制が整えられていました。
当時の私は病院長補佐であり、中央手術部の責任者でもありました。
定期手術の中止を決断した一方で、最も頭を悩ませたのは手術材料の確保でした。
病院では経営効率を考え、必要以上の在庫を持たない運用が一般的です。
しかし災害時には、それが大きな課題になります。
物流が止まり、高速道路は寸断され、燃料も不足し、輸送車両は救援活動が優先されました。
「必要な物が届かない。」
その現実を初めて身をもって経験しました。
幸い栃木県内では、一部の医療機関を除き比較的早く通常診療へ戻ることができました。
大学からはDMATも東北へ派遣されましたが、後から聞いた話では、現地では負傷者の治療よりも、津波による多数の犠牲者への対応が中心だったそうです。
また、能登半島地震では道路そのものが寸断され、現場へたどり着くこと自体が大きな課題になりました。
同じ地震災害でも、都市部なのか沿岸部なのか、山間部なのかによって、必要とされる医療も支援の方法も大きく変わります。
夜が明ければ、さらに詳しい被害状況が明らかになるでしょう。
災害対応では、まず正確な情報を集めることが何より重要です。
その上で優先順位を判断し、人命救助、医療、避難所支援へとつなげていかなければなりません。
避難生活が長引けば、熱中症や感染症、そしてエコノミークラス症候群など、新たな健康問題も生じます。
日本静脈学会をはじめとする学会や医療団体も、必要に応じて弾性ストッキングなどの支援を開始することでしょう。
天気予報では、今後も猛暑が続くとされています。
避難生活における熱中症対策も、大きな課題になるはずです。
今日の理事会で会長は、「災害は決して他人事ではない」という言葉を繰り返されました。
まさにそのとおりだと思います。
大学病院のような三次救急医療機関と違い、私たちクリニックには地域の一次医療を支える役割があります。
だからこそ、被災地の状況をただ報道として見るのではなく、「もし函館で同じことが起きたら」と置き換えて考えることが大切です。
災害への備えとは、非常食や防災用品を準備することだけではありません。
地域の医療機関として、自分たちに何ができるのかを日頃から考え、何度もシミュレーションしておくことが、最も重要な備えなのだと思います。
院長 小西宏明
2026-07-28 21:50:00
クリニックブログ
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