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ワクチン接種もデジタル化へ

ワクチン接種もデジタル化へ

今日は定例の医師会理事会でした。

冒頭、市立函館保健所から「ワクチン接種のデジタル化」について説明がありました。これは法律の施行に伴うもので、実質的には今後の標準的な運用になっていくものです。

ただ、日本医師会にも確認されていますが、診療所をはじめとする医療機関そのものにデジタル化が義務付けられるわけではないとのことでした。

コロナ禍以降、成人であっても接種できるワクチンの種類や回数が増えています。

ワクチン接種は、ただ注射をすれば終わりというものではありません。

毎回、問診票への記入、体温測定、接種歴や接種時期の確認、費用負担の確認などが必要になります。

特に公費負担の対象者では、年齢や所得などによって自己負担が異なる場合がありますから、受付段階から確認することが少なくありません。

これを毎回紙で行うとなると、患者さんにとっても医療機関にとっても結構な手間です。

そこで今回のデジタル化です。

想定されている運用では、受診前にスマートフォンなどから問診内容を入力し、過去の接種履歴や次回の接種時期なども確認できるようになります。

保険情報などとも連携されれば、費用負担についても今より分かりやすくなるでしょう。

医療機関側でも紙の問診票を扱う必要がなくなり、パソコンやタブレットで問診内容を確認できます。

接種後に必要となるワクチンの薬品名やロット番号などの入力も簡略化されることになります。

そして、こうして蓄積された情報が個人の医療情報として管理されていくことになります。

これはまさに医療DXの一部です。

情報をデジタル化することによる恩恵が大きいことは、我々も日常生活の中ですでに実感しています。

一方で、情報漏洩や入力間違いなどのリスクが完全になくなることもありません。

どれほど堅牢なシステムを作っても、情報を扱う以上、一定のリスクは残ります。

そして、もうひとつ現場として気になるのが、「モノ」の問題です。

ワクチン接種を実際に行う医療機関には、パソコンやタブレットなど何らかのデジタル端末が必要になります。

そうなると、

「その費用は誰が負担するのか?」

「毎月の維持費は?」

「故障したら誰が対応するのか?」

「システムの更新費用は?」

といった問題が必ず出てきます。

そもそも今回のワクチン接種デジタル化は、国が推進する医療DXの一環です。

ところが、こうした大前提となる「モノ」の部分については、結局のところ医療機関側の負担になってしまうことが少なくありません。

最初に述べたように、日本医師会が「医療機関への義務化ではない」と念を押しているのには、こうした費用面の問題と、デジタル化への対応が難しい医療機関への配慮があるのだと思います。

今回のワクチン接種に限らず、医療情報のデジタル化にはお金とスキルが必要です。

ただ、個人的にはスキルについては、あと5年、10年もすれば、今ほど大きな問題として考える必要はなくなるのではないかと思っています。

例えば現在、スマートフォンを全く使えない、メールもできないという医師は、かなり少なくなっているでしょう。

一方で、費用の問題は別です。

医療情報のデジタル化を国が政策として進め、さらにそれを事実上必要なものとしていくのであれば、必要となる基本的なシステムや端末の費用は国が負担すべきだと思います。

技術的にも、個々の医療機関がそれぞれ異なるシステムを構築するのではなく、クラウド化と標準化されたアプリケーションを基本とすべきでしょう。

個人の医療情報を、それぞれの医療機関がバラバラに保存・管理するという発想にも限界があります。

医療機関をまたいで利用する情報であれば、国家的なインフラとして一元的に管理する仕組みが必要です。

もちろん、その分だけ情報セキュリティーに対する責任は重大になります。

今回の医療DXについて、日本医師会では長嶋常任理事が医療情報関係を担当されています。

実は栃木県に病診連携システム「とちまるネット」を立ち上げた際、栃木県医師会の代表として私と一緒に取り組んでいただいた整形外科クリニックの院長です。

彼は非常にバランス感覚に優れた方で、情報を利用する側だけでなく、管理する側の立場にも目を配ることができます。

医療情報は便利になればそれで良いというものではありません。

「誰が見るのか」「誰が管理するのか」「どこまで共有するのか」という問題が必ずついてきます。

そうした点でも、今後の活躍を応援したいと思っています。

今日の保健所からの説明は、実は1か月ほど前に内科会会長という立場から私のところに事前説明がありました。

その時点で、デジタル化そのものについては総論として賛成ですが、現場で実際に運用する際の問題点についてはいくつか指摘させていただきました。

今回の説明を聞いても、基本的な方向性については間違っていないと思います。

紙の問診票を何度も書き、接種歴を確認し、費用負担を調べ、接種後にロット番号を記録する。

こうした作業をデジタル化することで、患者さんにも医療機関にもメリットがあることは間違いありません。

ただし、「便利になるから導入する」のと、「国が進めるから現場が費用を負担する」のは別の話です。

医療DXを本当に成功させるためには、現場の医師やスタッフに新たな負担を押し付けるのではなく、国が必要なインフラを整備し、医療機関が無理なく利用できる仕組みにすることが重要です。

2028年4月1日の施行を目指しているとのことです。

これから医師会としても、単に「賛成」「反対」とするのではなく、現場で実際に使える仕組みにするための妥協点を見出していく必要があると思っています。

医療DXは、医療現場を楽にするためのものです。

それが逆に、現場を疲弊させる仕組みになってしまっては本末転倒です。

院長 小西宏明

2026-08-25 22:07:00

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