香川県知事選挙が行われ、現職の知事が再選されました。
香川県には個人的にも少し御縁があります。中学・高校の同級生がいますし、研修医時代の後輩が現在、大学病院の心臓血管外科教授を務めています。また、大学の先輩には香川県内で大きな診療所を経営されている先生がおられます。
この先生は麻酔科医で、学生時代のポリクリ、関東でいう病院実習の際に我々学生を指導して下さいました。その後、約10年ぶりに前職の大学病院へ麻酔科教授として着任され、公私にわたって大変お世話になりました。もう80歳近くになられるのではないかと思います。
そんな香川県の知事選挙で、全国で2例目となる電子投票が行われました。大きなトラブルもなく終了したようです。
国会での採決も現在は電子投票が使われており、開票作業もほとんど必要ありません。投票が終わると、すぐに正面のモニターへ結果が表示されます。
県知事選挙でも、開票に必要な人員や時間を大幅に減らすことができます。
極めて単純なデジタル化ですが、その効果は大きいと思います。
先日のブログでも取り上げましたが、国はワクチン接種についてもデジタル化を進めています。
全国の保健所や医師会を通じて説明が始まっており、2028年4月1日の運用開始を目指しているそうです。
これまでの紙の問診票をスマートフォンのアプリに置き換え、接種履歴や接種時期などを確認しやすくする。医療機関側でも入力作業を減らすことができます。
これも、人手不足を補うためのデジタル化と言えるでしょう。
さらに函館市医師会では、看護専門学校の講義についても、オンラインあるいはデジタル教材として共有することを提案しています。
コロナ禍を経験して、授業のオンライン化は一気に普及しました。
看護学生が国家試験に合格するために必要な知識は、学校によって大きく違うものではありません。
一方で、現在大きな問題となっているのが教員不足です。
そもそも講義の内容も量も、学校の常勤教員だけで全てを担うことは難しく、全国どこでも医師会員が看護学校の講義を担当しています。
ところが、その医師会員自身が減少しています。
現在でも複数の看護学校で講義を担当している先生が少なくありません。
もし講義をオンライン化できれば、医師は自分の診療所から講義を配信できます。
さらに一度収録した講義を教材として保存しておけば、複数の学校で利用することもできます。
実際、現在の医学生はYouTubeなどで公開されている医学系の講義を視聴して勉強することも珍しくありません。
そう考えると、デジタル化は単なる「便利な道具」というより、人手不足を補うための緊急回避策になっているように思います。
どこを見ても人が足りない。
その不足を補うために、デジタル化が必要になっているのです。
ところが、ここで少し気になることがあります。
今日、スタッフが母親の携帯電話の機種変更に付き添って行きました。
いわゆる「ガラケー」です。
市内には一台だけ在庫があったそうです。
確かに超高齢者にとって、今からスマートフォンへ乗り換えるのは簡単なことではありません。
電話をするだけなら今までの携帯電話で十分なのに、世の中がデジタル化することで、本人の意思とは関係なく新しい機器を使わざるを得なくなることがあります。
ここで、先ほどのワクチン接種のデジタル化を思い出します。
紙の問診票をスマートフォンのアプリに置き換えるのであれば、当然ですがスマートフォンそのものが必要です。
アプリだけあっても使えません。
スマートフォン、タブレット、パソコンなどの「デジタルデバイス」が必要になります。
つまり、
デジタル化=デジタルデバイスを使いこなすこと
でもあるのです。
そして、このデジタルデバイスが決して安くありません。
例えば、9月に発表されるのではないかと噂されているAppleの折りたたみ式iPhoneについては、40万円前後になるという予想もあります。
現在販売されているiPhoneでも、最上位機種になれば30万円近い価格です。
安価なパソコンなら2台購入できる金額です。
一般的に、新しい製品は普及すればするほど価格が下がっていきます。
テレビなどは、その典型でしょう。
ところが情報端末は少し事情が違います。
普及したから安くなるというより、普及するにつれて高機能化し、その高機能を実現するために価格も上がっていきます。
「電話ができれば良い」という人にとっては必要のない機能まで、どんどん追加されていきます。
もちろん、高機能化そのものが悪いわけではありません。
それによって我々の生活は間違いなく便利になりました。
しかし、社会全体がデジタル化していくと、その便利さを享受するための費用まで個人が負担しなければならなくなります。
特に高齢者にとっては、機器を購入する費用だけではありません。
使い方を覚える時間、設定する手間、故障した時の対応、買い替え、そして場合によっては毎月の通信費まで必要になります。
「紙をなくせば便利になる」と言うのは簡単ですが、紙をなくした先には、誰かがデジタル機器を購入し、維持し、操作しなければならない現実があります。
人手不足を補うためのデジタル化は、これからますます避けられないでしょう。
電子投票も、ワクチン接種も、看護教育も、医療そのものも、デジタル化によって大きく変わっていくはずです。
だからこそ私は、デジタル化そのものに反対するのではなく、「その費用と負担を誰が担うのか」まで考える必要があると思います。
人手不足を解消するために社会全体でデジタル化を進めるのであれば、そのための基本的な機器やシステムについては、利用者個人にすべて負担させるのではなく、社会全体で支える仕組みがあっても良いのではないでしょうか。
便利になることと、負担が増えないことは同じではありません。
デジタル化の恩恵を受けるために、いつの間にか新しい「出費」が当たり前になっている。
そんなことにならないよう、便利さの裏側にある費用にも目を向けておきたいと思います。
院長 小西宏明
2026-08-30 21:08:00
クリニックブログ
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