今日は夜間急病センターの当番でした。
少し気温が落ち着いているためか、8月後半から受診者数は比較的少なめです。ただ、コロナ感染者は相変わらず見られ、インフルエンザも確認されていました。
8月は、どこの医療機関でも昨年のような熱中症患者の入院が少なかったようで、病院では空床が目立っていたそうです。
今日も数名は二次医療機関への紹介が必要となりましたが、当番病院は非常に混雑しているようでした。
点滴をしても症状が改善しない患者さんについては、「夜間急病センターの診療時間内であれば、もう少し診てほしい」と、逆にお願いされることもありました。
おそらく医師や看護師も手一杯で、病床にも余裕がなかったのだと思います。
もちろん、何でもかんでも二次医療機関へ「丸投げ」することが問題なのは理解しています。
今日も救急車を数台、同時に受け入れました。
しかし、限られた人員と検査設備の中で一次診療を担う夜間急病センターにも、どうしても対応できる範囲には限界があります。
以前のブログでも触れましたが、函館市の夜間医療体制は、少なくとも道内では比較的うまく運用されている地域だと思います。
例えば札幌市では多くの病院があるがゆえに、「自院で受け入れられなくても、どこか別の病院が受けてくれるだろう」という状況になり、かえって搬送先がなかなか決まらないことがあります。
患者さんの中には、かかりつけ病院があるにもかかわらず、「救急搬送の場合は、その日の当番病院にしか行けない」と説明される方もいます。
現在の医療は、一人の医師がすべてを担当するのではなく、チームで患者さんを診ることが多くなっています。
診療科内であっても、夜間は主治医ではなく当直医が対応するのが普通です。
私が研修医だった頃は、末期がんの患者さんを受け持つと、しばらく遠出ができませんでした。
いつ急変するかわからないからです。
今では、そうした医師個人への依存から、組織として患者さんを支える仕組みへと変わってきました。
一方、日本では医療へのアクセスが非常に容易です。
救急外来を受診する患者さんの約7割が軽症というデータもあるように、「困ったら救急へ」ということが比較的容易にできる社会です。
以前、ある地域では救急専門医がセンター長として着任したものの、想像以上に軽症患者が多いことに翻弄され、1年足らずで退職されたと聞いたことがあります。
地域の医療機関ごとの役割分担が、うまく機能していなかったことも一因だったのでしょう。
救急医療は、救急医療だけで完結するものではありません。
一次、二次、三次医療、それぞれが役割を分担して初めて成り立ちます。
医師会の仕事が長くなるにつれて、函館の救急医療体制が現在の形になるまでにも、さまざまな紆余曲折があったことを知るようになりました。
当時の先生方や病院長が試行錯誤しながら情報を共有し、少しずつ現在の体制を作り上げてきたのです。
つまり、今ある体制は決して自然に出来上がったものではありません。
ところが、ここに大きな問題があります。
あと5年もすると、夜間の一次診療を担う医師そのものが不足してくるのです。
これは現在担当して下さっている先生方の年齢を考えれば、かなり正確に予測できます。
高齢になれば、夜間当番から引退する。
これは誰にでも起こることです。
函館市医師会員の平均年齢は、もうすぐ70歳に届こうとしています。
私自身も来年になれば、希望すれば夜間当番から引退できる年齢になります。
少なくとも、昨年亡くなられた先生のように、86歳まで夜間当番を続けることを前提にすることは、もうできないでしょう。
医師の使命感や責任感に頼れば、今しばらくは何とかなるかもしれません。
しかし、それは医療体制とは呼べません。
夜間当番は一人の医師にとっては年に数回です。
それでも、医師全体の数が減れば、一人当たりの担当回数は増えていきます。
さらに高齢化によって、夜間勤務そのものが難しくなる先生も増えてきます。
コロナ禍前に比べれば、夜間急病センターの不適切な利用は減っているように感じます。
それでも、これから医師不足が「待ったなし」の状況になるのであれば、そろそろこの現実を市民の皆さんにも知っていただく時期に来たのではないでしょうか。
「函館には20万人以上の人口がいるのだから、具合が悪くなれば、いつでもどこかの医療機関で診てもらえる」
残念ながら、これからはその前提が崩れる可能性があります。
問題なのは、窓口でいくら負担するかだけではありません。
そもそも診てくれる医師がいるのか。
こちらの方が、はるかに重要な問題です。
限りある医療資源を有効に活用するためには、医療者側だけでなく、利用者である市民の皆さんの協力も不可欠です。
少なくとも、5年後に起こり得ることについては、今のうちから事実としてお伝えしておいても良いのではないかと思います。
医療は、医師の善意や使命感だけで維持できる時代ではなくなりました。
これまで先輩方が作り上げてきた函館の救急医療体制を、次の世代へどう引き継いでいくのか。
そのためには、医師会だけでなく、行政、医療機関、そして市民の皆さんが同じ現実を共有することから始める必要があると思います。
院長 小西宏明
2026-09-01 23:02:00
クリニックブログ
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