今日の夕方、衆議院議員の向山さんの秘書の方が、ご挨拶に来られました。
向山さんご本人は、予算編成作業などもあり、今も大変お忙しく東京を離れられないようです。
そのような中でも、地元へのコンタクトを絶やしてはいけないということなのだろうと理解しました。
もちろん、今回私個人を目当てに来られたわけではありません。
あくまで函館市医師会副会長という立場に対してのご挨拶です。
函館市医師会は以前から、特定の候補者を組織として推すということはしてきませんでした。常に自由投票の立場です。
一方で、ここ函館で生まれ育った先生であれば、ご本人だけでなく、ご両親をはじめ親族も函館に住んでいるということがあります。
何世代にもわたる人のつながりがありますから、候補者個人を応援する場合もあれば、政党を応援する場合もあるでしょう。
今回の秘書の方は、おそらく本当の意味での「ご挨拶」に来られたのだと思います。
ただ、来年度の予算要求に向けた医療関係の資料も持参されていましたので、せっかくの機会でもあり、私からも少し意見を述べさせていただきました。
地元の小さな変化を拾えるか
小選挙区で当選を重ねていくためには、地元のあらゆる団体の声を拾うことが大切だと思います。
そして、例えば昨年のイカ漁のような突発的な問題が起きた時には、いち早く状況を把握し、対応する。
こうした小さな変化への即応性、いわばフットワークの軽さが地元選出議員には重要なのではないでしょうか。
大泉潤市長は、2023年の市長選では立憲民主党の支援を受けて当選しましたが、今年2月の衆院選では自民党の向山さんを支援しました。こうした政治的な変化についても報道されています。
私は政治の内部事情を知っているわけではありません。
ただ、市長という国会議員以上に地元密着の立場にある人からすれば、地元の変化への即応性がいかに重要なのかは、身に染みて感じているのではないでしょうか。
国会議員からすれば、一つ一つは小さな問題に見えるかもしれません。
しかし地元から上がってくるボトムアップの要望に十分反応してもらえなければ、地元としては「なぜ聞いてもらえないのか」という思いになるでしょう。
政治家には、森全体を見ることも必要ですが、一本一本の木の状態を見ることも必要です。
空から森ばかり眺めていて、一本一本の木が枯れていることに気がつかないのでは困ります。
医療を「病院」と「診療所」の両方から見てほしい
私からは、秘書の方を通じて向山さんに二つのことを伝えていただきたいと思いました。
一つ目は、医療を考える時に、病院と診療所を別々の立場として見ていただきたいということです。
今年6月から診療報酬が改定されました。
全体としては2年度平均で3.09%のプラス改定ですが、実際の配分にはかなり差があります。病院には+0.49%、医科診療所には+0.10%という配分になっています。
もちろん診療報酬は単純に「3%増えた」と考えられるものではありません。
賃上げ、物価対応、入院医療への対応など、様々な項目が組み合わされています。
しかし、現場から見ると、今回の改定が病院の経営環境を救済する方向に重点を置き、その一方で診療所には厳しい配分となっていることは明らかです。
私は、これは単なる点数の問題ではないと思っています。
日本の医療は公的医療保険制度の中にあります。
そのため、診療報酬という仕組みを通して、国は医療機関の行動や医療提供体制にかなり強く影響を与えることができます。
医療費を抑制しながら医療提供体制を維持する。
これは非常に難しい問題です。
病院の経営が厳しくなれば地域医療そのものが維持できません。
一方で、診療所が多いことは、国民にとって医療へのアクセスを良くする一方、場合によっては医療へのアクセスの容易さが過剰な受診や医療利用につながる可能性もあります。
したがって、これからの日本では、
「病院をどう残すのか」
だけではなく、
「診療所を含め、地域にどのような医療機関を、どれだけ配置するのが適切なのか」
という問題まで考えなければならないと思います。
もう一つは、「日本の医療をどうしたいのか」ということ
二つ目に伝えたかったのは、もっと大きな話です。
日本の医療を、国として今後どうしていきたいのか。
医療機関の経営や診療報酬という「お金」の話とは別に、日本国民の安心と安全を担保する医療を、国家としてどのように構築していくのかという問題です。
医療はボランティア活動ではありません。
しかし、一般の飲食店や小売店と同じような完全な自由競争に任せるものでもありません。
国民から集めた保険料や税金などを原資として、国民の生命と健康を守る必要があります。
この非常に特殊な産業を、これからどう維持していくのか。
そこには、長期的な国家としての方針が必要だと思います。
私は以前、大学病院の病院長補佐をしていた時期があり、病院長の仕事を間近で見ることができました。
病院長はもともと一つの診療科の教授です。
教授である間は、自分の専門領域の病気について、研究や診療にしっかり取り組むことが第一義です。
ところが病院長になった瞬間に、全く門外漢の分野についても病院全体の運営責任を負うことになります。
これは、とても一人の力でできる仕事ではありません。
各分野の専門家を集めてチームを作る必要があります。
そして何より、トップとして判断するときに拠り所となる明確な方針を持っていなければなりません。
その場その場で行き当たりばったりに判断していけば、必ずどこかに歪みが生じます。
これは病院だけではなく、国家も同じではないでしょうか。
政治家に「八方美人」は必要ない
特に地元を持つ小選挙区の政治家には、様々な団体や個人から要望が届きます。
地元代表であるがゆえに、忖度しなければならない相手も増えていくでしょう。
しかし、必ず「あちらを立てればこちらが立たない」という場面が出てきます。
すべての人にとっての「ウイン・ウイン」など、現実にはほとんどありません。
だからこそ、政治家にはぶれない自分自身の方針を早い段階で持っていただきたいと思います。
何でも相手に合わせる「八方美人」では、いずれ見透かされてしまいます。
そして、最終的には信用を失います。
地元の声を聞くことと、地元の声に迎合することは違います。
一人一人の声を聞いた上で、自分は何を優先するのかを決める。
それが政治家の仕事なのだと思います。
秘書という仕事
ちなみに、本日来られた秘書の方は、もともと医療関係の仕事に従事されていたそうです。
私には政治家の秘書という仕事の詳細は分かりませんが、単なる事務処理係ではないはずです。
今日お話しした印象では、向山さんの代役として十分に仕事を担っておられるという印象を持ちました。
私自身も教授職をしていた頃には秘書がいました。
秘書の仕事ぶりは、間違いなく自分自身の仕事にも影響します。
トップが一人ですべてをできない以上、周囲にどのような人材を置くのかは非常に重要です。
これは病院長でも、政治家でも同じなのだと思います。
今回は、公的な立場でもありますので、特定の政治家や政党に加担することは敢えて控えました。
その代わり、「地元選出の政治家にこうあってほしい」という、より広い意味での期待をお伝えして、面談を終えました。
向山さんは当選直後、国会議事堂前での写真撮影が話題になりました。
しかし、もう「若気の至り」だけで済ませられる時期ではありません。
これからは、国会議員として、そして北海道8区という地元を背負う政治家として、より大きな責任が求められる時期に入ったのだと思います。
森を見ることも大切です。
しかし、地元の一本一本の木がどうなっているのかを見ることも忘れないでいただきたい。
そして、森全体をどこへ導いていくのかについては、ぶれない方針を持っていただきたい。
医療についても、単に診療報酬を上げる、下げるという議論だけではなく、
「日本はこれから、どのような医療を国民に提供していくのか」
という大きな視点から、政治家の皆さんには考えていただきたいと思います。
向山さんの今後のご活躍を期待しています。
院長 小西宏明
2026-09-04 21:22:00
クリニックブログ
| コメント(0)