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記憶は曖昧、症状は主観的

記憶は曖昧、症状は主観的

人間の記憶は、それほど正確ではありません。むしろ非常に曖昧なものです。自分自身を振り返っても、記憶違いや思い違いは少なくありません。

ところが病気となると、「命に関わることだから、さすがに正確に覚えているだろう」と思いがちです。

しかし、医療現場ではそうでもありません。

我々は患者さんから、過去の病歴だけでなく、現在の体調についても「問診」を行います。ところが、時系列や治療内容、特に病名については、詳細が分からなかったり、誤解されていたりすることが少なくありません。

「○○病院でこういう治療を受けた」と言われ、実際に問い合わせてみると、そもそも受診歴がなかったということさえあります。

いわゆる「話半分」は、医療現場にも当てはまります。

特に注意しているのが、担当医との相性が合わないという理由で転医してきた患者さんです。不安や不信感が本人の説明から伝わってきますが、果たしてその通りなのかは慎重に考えなければなりません。

総合病院では外来患者も多く、入院中であっても医師が十分な時間をかけて説明できないことがあります。その結果、患者さんの理解が不十分となり、時間が経つにつれて記憶が曖昧になったり、内容が変わったりすることもあります。

そこで私は、まず病態を把握するようにしています。他院からの診療情報を取り寄せることも、その一つです。

それとは別に、患者さん本人の訴えを伺います。

つまり、「客観的な事実」と「本人の主観的な訴え」を一度分けて考えるのです。

病気と症状は必ずしも比例しません。無症状で進行する膵臓癌のように、本人が何も困っていなくても、発見時には進行している病気もあります。

反対に、症状が非常に多いからといって、重大な病気が隠れているとは限りません。

診断学の基本は、まず病態を整理し、そこに患者さんの訴えを重ね合わせていくことです。

時にはマシンガンのように次々と症状を訴える患者さんもいます。

そんな時こそ、患者さんの頭の中が混乱しているからといって、我々の頭の中まで混乱させられないようにする。

それも医師に求められる資質と経験だと思っています。

院長 小西宏明

2026-09-08 21:39:00

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