筑波大学の柳沢正史先生に、アメリカのラスカー賞が授与されることになりました。オレキシンという神経ペプチドを発見し、睡眠・覚醒の仕組みを大きく変えた研究が評価されたものです。現在使われている不眠症治療薬などにもつながっています。
実は私の前職の大学病院には、柳沢先生の大学時代の同級生がいました。同級生の間では「柳沢はいつかノーベル賞を取る」と言われていたそうです。
当時、その理由は今回のオレキシンではなく、1988年に発見した血管収縮因子エンドセリンでした。その後、米国テキサス大学に移り、1998年にオレキシンを発見されました。わずか10年の間に、人間の血管と睡眠という全く異なる領域に関わる重要な物質を発見したことになります。
ラスカー賞は「ノーベル賞への登竜門」とも言われ、過去には利根川進先生や山中伸弥先生も受賞しています。今回も、ぜひノーベル賞を期待したいところです。
一方、私が注目したいのは、研究そのものだけではありません。
柳沢先生のような研究を可能にしたのは、自由に研究できる環境と、それを支える十分な資金です。
私自身も米国で3年間研究生活を送りました。日本とは違う「懐の深さ」を感じました。何処の馬の骨とも分からない留学生にも研究する機会を与えてくれる。これは大きな違いでした。
研究の始まりは、日常のちょっとした「気づき」です。
日本人は、その気づきを見つける能力では決して劣っていないと思います。しかし、それを自由に追究し、大きな研究へ育てる環境は十分でしょうか。
柳沢先生の受賞を喜ぶ一方で、そこに至るまでの研究環境を考えると、少し複雑な気持ちになります。
日本に足りないのは、研究者の才能ではなく、その才能を十分に伸ばす土壌なのではないでしょうか。
何はともあれ、柳沢先生にはぜひ次のノーベル賞を期待したいと思います。
院長 小西宏明
2026-09-11 18:55:50
クリニックブログ
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