先日、話し言葉の「年代差」に関するニュースを見ました。その中で興味深かったのが、役職と名前の呼び方です。
上司を「○○さん」と呼ぶ、役職だけで呼ぶ、あるいは「○○部長さん」のように役職に「さん」を付けるなど、世代によって違いがあるそうです。若い世代では役職を付けず、名前だけで呼ぶことも多く、親近感を表す意味があるとのこと。逆に中高年では、役職を付けることが礼儀と考える傾向があります。
我々医師の世界では、ほとんど誰に対しても「先生」です。「○○先生」と呼んでおけば、目上の人でも役職が上の人でも失礼にはなりません。親しみを込めるべきか、距離を置くべきかなど、呼び方に悩む必要がないのです。
大学生の頃、臨床実習で病院を訪れると、指導医の先生方は患者さんの前で我々学生のことまで「先生」と呼んでいました。白衣を着て病院内を歩くだけでも緊張していたのに、「先生」と呼ばれると、ますます身体が縮こまったものです。
一方、留学したアメリカでは、上司や同僚をファーストネームやニックネームで呼ぶことに慣れるまで時間がかかりました。ThomasならTom、RobertならRobです。直属の教授までニックネームで呼ぶのには、どうしても違和感がありました。
さらに驚いたのが、ミーティングで皆が足を組んでいること。中には話をしながら机の上に座る人までいました。文化が違えば、礼儀の基準も変わります。
医師になったばかりの頃も、初日から「先生、先生」と呼ばれ、「まだそんなに偉くないのに」と恐縮したことを覚えています。しかも最初の配属先は病院でも特に忙しい消化器外科。数十人の患者さんを受け持ち、朝から「先生」と呼ばれ続け、夕方には恐縮している暇などありません。指導医について、とにかく仕事を覚える毎日でした。
それでも「先生」という呼び方は、実に便利です。相手との年齢や役職、距離感を考えずに使える。呼ばれる側にとっても、呼ぶ側にとっても気が楽なのです。
改めて考えると、「どう呼べば相手に失礼にならないか」を考える文化そのものが、日本人の相手を思いやる心の一部なのかもしれません。
「先生」というたった一言にも、日本人の礼儀やおもてなしの精神が表れているように思います。
院長 小西宏明
2026-10-02 20:55:00
クリニックブログ
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